複雑性PTSDとは?症状の特徴と、無理なく働き続けるためのヒント
2026.09.01
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■はじめに
複雑性PTSDとは、長期間にわたって繰り返しトラウマとなる出来事を経験することで発症する精神障害のことです。感情のコントロールや対人関係に難しさが出やすく、仕事をする中でつまずきを感じる方も少なくありません。だからといって「働けない」というわけではなく、症状の特徴を理解し、自分に合った環境や働き方を選ぶことで、無理なく仕事を続けていける可能性は十分にあります。
この記事では、複雑性PTSDの基本的な特徴と、仕事でつまずきやすい場面、そしてそれぞれの場面でどう工夫していけるかを解説します。
■複雑性PTSDとは
複雑性PTSDは、単発の強いショック体験ではなく、長期間にわたって繰り返しトラウマとなる出来事を経験することで発症する精神障害です。国際的な診断基準であるICD-11で新たに位置づけられた診断概念で、幼少期の虐待や長期間のDV、いじめなど、逃れることが難しい支配的な関係の中で受けた体験が背景にあることが多いとされています。■PTSDとの違い
PTSDも複雑性PTSDも、強いストレスとなる体験がきっかけとなって症状が現れる点は共通しています。フラッシュバックや強い不安、警戒心の高まりといった症状は、どちらにも見られるものです。両者の違いは、きっかけとなる体験だけでなく、症状の現れ方にもあります。PTSDでは、つらい体験の再体験や、その体験を思い出させるものの回避、強い警戒心などが中心となります。複雑性PTSDでは、こうした症状に加えて、感情のコントロールの難しさ、否定的な自己イメージ、対人関係の困難が続きやすいことが特徴です。
複雑性PTSDは、長期にわたり繰り返され、逃れることが難しいトラウマ体験を背景とすることが多いとされています。ただし、体験の回数や期間だけで、PTSDか複雑性PTSDかが決まるわけではありません。
■複雑性PTSDによって、仕事でつまずきやすい場面
複雑性PTSDの特徴は、仕事の中でも特定の場面で表れやすい傾向があります。ここでは代表的な場面を紹介します。
●報連相が苦手に感じる
相談することに抵抗を感じ、一人で仕事を抱え込んでしまうことがあります。「相談したら無能だと思われるのではないか」という不安や、これまでの経験の中で話しても理解してもらえなかったという感覚が、その根っこにある場合があります。結果として、報連相のタイミングを逃してしまい、仕事上のミスや行き違いにつながることがあります。
●感情の波が大きくなる
ささいなことがきっかけで、感情が大きく揺れ動くことがあります。長く緊張を強いられる環境で過ごしてきた経験から、感情の調整そのものが難しくなっていることが背景にあります。怒りとして表に出ることもあれば、強い自己否定感や孤独感として内側に向かうこともあり、いずれも周囲との関係に影響しやすい部分です。
●フラッシュバックや、それを避けようとする行動
過去のつらい体験が急に思い出され、動悸や強い不安を感じることがあります。それを避けようとして、特定の状況や人を避ける行動につながり、結果として仕事に支障が出てしまうケースもあります。
●対人関係が安定しにくい
人との距離の取り方が極端になりやすく、心を許した相手に強く依存してしまったり、逆に人を信用できず距離を置いてしまったりすることがあります。長期にわたるトラウマ体験の中で、人を信頼することそのものが難しくなっていることが背景にあるとされています。この特徴が、職場の人間関係の中で居心地の悪さを感じやすい要因の一つになっています。
■無理なく働くためのポイント
このような特徴があったとしても、働き方や環境の選び方を工夫することで負担を減らしながら仕事を続けやすくなります。●短時間勤務から少しずつ慣らしていく
はじめから長時間・フルタイムを目指すのではなく、短い時間から始めて、体調や環境への慣れを見ながら少しずつ勤務時間を増やしていく方法があります。無理をして体調を崩してしまうと、かえって長続きしにくくなるため、焦らずに自分のペースで進めていくことが大切です。
●自分の症状や特性をまわりに共有できる環境を選ぶ
症状や特性について理解を示してくれる職場を選ぶことで、周囲からのサポートを受けやすくなります。一人で抱え込みやすい傾向があるからこそ、こうした環境があるかどうかは働きやすさに大きく関わってきます。
といっても、すべてをオープンにしなければいけないわけではありません。自分が伝えられる範囲で相談できる環境を選ぶということです。
●フラッシュバックのきっかけになりやすい状況を把握しておく
不安や緊張が強まりやすい場面は人によって異なりますが、大声で叱責されるような場面、予定が急に変わること、大人数の中で発言を求められることなどが、きっかけになりやすいと言われています。
日々の中で「これはつらかった」と感じた場面をメモしておくと、自分なりの傾向が少しずつ見えてきます。こうして自分の傾向を把握しておくと、そういった場面が多い職場や業務内容を、仕事を選ぶ段階で事前に避けやすくなります。
●一人で抱え込まず、相談先を持っておく
複数の相談先を持っておくと、一つの相手や場所に頼れなくなったときも、他の窓口に相談を続けられます。主治医やカウンセラーといった医療の窓口、就労移行支援の支援員、同じような経験を持つ人とつながれるピアサポートの場など、選択肢はいくつかあります。
体調面の話は主治医に、仕事の進め方は支援員に、というように、内容に応じて話しやすい相手を選べることも複数の相談先を持つメリットです。
■就労移行支援という選択肢もあります
複雑性PTSDの特徴は、症状や程度によって一人ひとり異なります。「自分の場合はどう働けばいいのか」を一人で考えるのが難しい場合は、就労移行支援のような専門的な支援を利用することも一つの方法です。体調や特性に合わせた働き方の相談や、職場でのコミュニケーションの練習などを通して、自分に合った仕事の見つけ方を一緒に考えていくことができます。
■まとめ
複雑性PTSDは、感情のコントロールや対人関係の面で仕事につまずきやすい特徴がありますが、自分の特徴を理解し、働き方や環境を工夫することで無理なく続けていく道はあります。複雑性PTSDは、長期間・繰り返しのトラウマ体験を背景に持つことが多く、そのために報連相への苦手意識や、感情の波、フラッシュバック、対人関係の不安定さといった形で、仕事に影響が出ることがあります。これは特性によるものであり、努力不足や本人の弱さが原因ではありません。
大切なのは、こうした特徴を無視して無理をすることでも、逆にすべてを避けて働くことを諦めることでもなく、自分の傾向を理解した上で、短時間から慣らす、理解のある環境を選ぶ、負担の大きい場面を把握しておく、相談先を複数持っておく、といった工夫を少しずつ取り入れていくことです。
自分の場合はどう働けばいいのか、一人で判断するのが難しいと感じることもあると思います。そうしたときは、主治医やカウンセラー、就労移行支援などの専門的な支援も頼りながら、自分に合った働き方を見つけていってください。
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