雇用事例Case

H.Kさん・男性・20代の雇用事例 発達障害(自閉症スペクトラム)

毎日密に連絡を取り、自己理解を深めるサポートを

H.Kさん(男性・20代・サービス業)

業務内容 洗車、車体の拭き上げ、社内のクリーニング
障害名 発達障害(自閉症スペクトラム)
自閉症スペクトラムとは
自閉症スペクトラム障害とは、神経発達症群に分類される診断名のひとつで、他者とのコミュニケーションや言語に関する症状があるという特徴があります。
通所前の症状・状況

大学在学中に就職活動で苦戦し、食品製造会社へ契約社員として入社されました。製造が間に合わない等の理由で「次の更新は難しい」と4ヵ月で退職となりましたが、ご本人様は、決められたルールを遵守しすぎて休憩時間を過ぎてしまったり、複数の製造レーンを一人で行うことが難しかったとのことです。
その後、お母様の勧めで発達検査を受けたところ障害があることが分かり、再就職を目指すための利用となりました。

通所中の状況
通称ペースは安定するが、自己理解が乏しい。

利用開始当初から週5日と安定した通所ができていて、フルタイムや正社員での就労を目指し、勤務時間(9時~17時)と同じ時間をハンズで過ごしていました。
全てのプログラムにおいて、指示理解が難しい場面や捉え違いも多く、指摘されるまで気付かないことがありました。また発達障害の診断をされている自覚はありつつ、自閉スペクトラム症の詳細や自己理解が出来ていない状態でした。コミュニケーションに関しても「よく分からないが、どこか上手くいっていないような気がする」程度の認識で、ご自身の伝えたい言葉と発言内容が異なることも多く、相手に正しく伝わらない事がありました。ビジネスマナーなどが身についておらず、理解出来ない事があると何時間も一人で考込み、その為周りについていけない事で、落ち込む事が多々ありました。

自己理解を深め、心身共に安定できる職場への就職を目指す。

1年が経過し、職能評価を受けた際に、自己理解や報連相の重要さを伝えることができました。その後、ご自身の希望内容から実習先を検討し、実践スキルの確認の為、実習(スーパー、図書館、清掃、洗車名など)に参加されました。
実習に参加後、就労する中で困りそうな場面や苦手なことを整理し、「心身共に安定して勤務を継続する」ことを目指し、再度条件の整理を一緒に行いました。しかし、「応募したい」という発言が本心なのか、またはご両親の意向をそのまま伝えているのか分からない場面も多くありましたので、「良いと感じたポイントはどこか」など、細かく聞き取りを実施し進めるようにしていきました。
「自分の障害や、得意不得意を理解してもらえる環境で働きたい」というご意向もあり、自身の特性や関わり方をハンズから企業に伝える事を前向きに捉えられ、実習や面接の際も、ご本人様に代わって伝えました。

1人で考え込まず、質問する大切さを学んでいく。

時間がかかっていた原因が「一人で(長時間)考え込んでいた事」だった為、ストップウォッチを活用し考える時間を決めて取り組みました。時間になると質問する練習を繰り返し、また作業時間を記録することにより、視覚的にもスピードアップし、次の目標を決めて取り組む事が出来ていました。
毎日、訓練報告という形で連絡を取りながら、「どのように伝えるか」を事前に考えていただくように促し、表現方法については一緒に確認し、別の言い回しがあれば伝えました。見た目からは心身状態が分かりずらい方でしたので、その日の心身状態や出来事などを記録してもらい、毎日確認する事で、気分の落ち込みの原因や調子が良い理由を、ご自身で客観的に把握出来るようになりました。
不安が増すと確認行動が増えるので、メモを取り確認出来るよう準備したり、ご自身の理解が合っているか確認していただくいよう練習しましたが、努力だけではカバー出来ない事も多かった為、サポート依頼を自ら出来るよう練習し続けました。

就業後の様子
企業の方と対応を確認しながら、安定した職場環境を目指す。

雇用前実習の段階で企業へほぼ毎日訪問し、担当の方へご本人様との関わり方を伝えました。トラブルがあった際はご本人様と面談し、柔軟に考えていただくよう伝え、ジョブコーチ支援も利用しました。

企業からも高評価!会社訪問は終了へ。

3ヵ月のジョブコーチ支援終了後、企業担当者様からも高評価をいただき、
頻繁に会社訪問する必要性がなくなりました。今後は、休日に面談をしたり、ご本人様の状況を伺いながら支援内容を検討していきます。