仕事を中断すると、なぜミスが起こる?2つの研究から考える
2026.10.20
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■はじめに
仕事中に電話がかかってきたとき、対応を終えてから元の仕事に戻ることを忘れてしまったり、作業をどこまで進めたのかわからなくなったりした経験はありませんか?
こうしたことは、仕事をしていれば起こり得ることです。しかし、なぜこのようなミスが起こるのでしょうか。
今回は、作業の中断と人間の記憶の関係について、2つの研究をもとに解説します。
■中断した仕事に戻ることを忘れてしまうのはなぜ?
2009年、認知心理学の研究者であるDodhiaと、NASAの研究者であるDismukesは、作業の中断と記憶の関係について調べました。
実験では、大学生にパソコンで数学や一般常識などの選択式の問題を解いてもらいました。問題を解いている途中で、突然別の種類の問題が表示され、作業が中断される仕組みになっていました。
参加者には、事前に割り込んできた問題を終えたら元の問題に戻るよう指示されていました。
割り込んできた問題を解き終えると、元の問題ではなく新しい問題が表示されるようになっていたため、参加者は元の問題に戻ることを自分で思い出し、前の画面に戻る操作をする必要がありました。
この実験では、参加者1人につき5回、問題が中断されました。研究者たちは、5回の中断のうち、何回元の問題に戻れたのかを調べました。
その結果、参加者は元の問題に戻るよう事前に説明され、操作の練習もしていたにもかかわらず、元の問題に戻れた回数は5回中平均2.4回でした。
一方、中断が終わってから次の問題に進むまでの時間を平均10秒に延ばした条件では、元の問題に戻れた回数が5回中平均4.4回でした。
この結果から考えられるのは、次になにをすべきかわかっていたとしても、必要なタイミングで思い出せないことがあるということです。
■仕事に戻っても、手順を間違えてしまうことがある
2014年、Altmannらは、作業を中断したあとに手順を間違える現象について研究しました。
この実験では、参加者にパソコンの画面に表示された文字や数字を見て、7種類の判断を決められた順番で繰り返してもらいました。
例えば、1番目は「文字に下線があるか、斜体になっているか」、2番目は「アルファベットが前半の文字か、後半の文字か」、3番目は「文字の色が赤か黄色か」といった判断です。
画面には毎回同じ形式の問題が表示されますが、何番目の作業なのかによって、判断する内容が変わります。
また、作業の途中で突然別の画面に切り替わり、指定された文字を入力するよう求められました。
例えば、2番目の判断を終えたところで中断された場合、文字の入力を終えた後は、3番目の判断から再開しなければなりません。
しかし、画面には何番目の作業まで終えたのかが表示されません。そのため、参加者は自分がどこまで進めていたのかを覚えておき、中断後も正しい順番で作業を続ける必要がありました。
実験の結果、平均2.8秒の中断があった場合、再開直後に手順の順番を間違える割合は、中断がない場合の約2倍になりました。平均4.4秒では、約3倍になっています。
わずか数秒の中断でも、手順を間違えやすくなったのです。
■まとめ
今回紹介した2つの研究から、人間は作業を中断すると、元の仕事に戻ることを忘れたり、再開したときに手順を間違えたりすることがあるとわかりました。
こうしたミスには、人間の記憶の仕組みが関係しています。そのため、「次からは気をつけよう」と意識するだけでは、同じ失敗を防ぎきれないのです。
だからこそ、人間の記憶にはどのような特徴があるのかを理解し、その特徴を踏まえて、ミスが起こりにくい仕組みを考えることが大切ではないでしょうか。
【参考文献】
1. Dodhia, R. M., & Dismukes, R. K. (2009). *Interruptions Create Prospective Memory Tasks.* Applied Cognitive Psychology, 23(1), 73–89.
2. Altmann, E. M., Trafton, J. G., & Hambrick, D. Z. (2014). *Momentary Interruptions Can Derail the Train of Thought.* Journal of Experimental Psychology: General, 143(1), 215–226.
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