完璧主義で苦しくなるのはなぜ?困りごとと日常で試せる工夫を紹介
2026.09.30
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■はじめに
「完璧主義」は、しばしば短所や直した方がよい性格として扱われることがあります。
しかし、「完璧にしよう」とすること自体は、決して悪いことではないはずです。それなのに、なぜ完璧主義は短所や直した方がよいものとして扱われるのでしょうか。
それには、完璧を求めることからくる苦しさが関係しています。
この記事では、完璧主義とはどのようなものかを解説したうえで、完璧主義によって起こりやすい困りごとと、それらに対応するために日常の中で試せる工夫を紹介します。
■完璧主義とは?
米国心理学会(APA)の心理学辞典では、完璧主義について、その状況で求められる以上に、自分や他人に対して非常に高い水準や欠点のない状態を求める傾向だと説明しています。
また、イギリスのNHSの心理支援サービスでは、非常に厳しい基準を自分に課して追い続けることに加え、その基準をどの程度達成できたかによって自分自身の価値を判断してしまうことも、完璧主義の特徴として説明しています。
こうした基準は、自身に負担が生じていても追い続けてしまうことがあります。
つまり、丁寧に取り組んだり、高い目標を持ったりすること自体が問題なのではありません。
「ここまでできなければいけない」という基準を緩めることが難しかったり、できなかったときに自分自身を強く否定したりすることで、苦しさや負担につながることがあります。こうした点が、完璧主義によって困りごとが生じる理由の一つです。
■完璧主義によって、こんな困り方をすることも
完璧主義というと、「細かいことを気にしてしまう」「何度も確認してしまう」といったことを思い浮かべるかもしれません。
しかし、完璧主義による困りごとは、それだけではありません。物事を途中で切り上げにくくなったり、反対に、完璧にできそうにないことでなかなか始められなくなったりすることもあります。また、人とのやり取りに必要以上に時間をかけたり、失敗した自分を強く責めてしまったりすることもあります。
ここからは、完璧主義によって起こることのある困りごとを、具体的に見ていきましょう。
① 一度始めると、中途半端なところでやめられない
掃除を始めると隅々まできれいにしたくなったり、仕事では作業に内容を何度も確認したりして、「もう十分」と思ってもなかなか切り上げられないことがあります。
西オーストラリア州の公的な心理支援機関であるCentre for Clinical Interventions(CCI)も、繰り返し確認することや、必要以上に整理すること、「いつやめればよいか分からなくなること」を完璧主義に伴う行動だとしています。
② 完璧にできそうにないと、そもそも始められない
一方で、「きちんとできないくらいなら、まだ始めないほうがいい」と感じることもあります。
CCIは、求める水準に届かないことを恐れて課題を先延ばしにしたり、十分にできそうにないと感じると、そもそも取り組まなかったりすることがあると説明しています。
一見すると「何でもきちんとやる人」とは反対に見えますが、完璧を求めることが、動き出しにくさにつながる場合もあります。
③ 短い返信で問題ない場面でも、間違った言い方をしないよう考え続けてしまう
チャットなど、短い返信で問題ない場面でも、「この書き方で大丈夫だろうか」「失礼に思われないだろうか」と気になり、文章を作るのに時間をかけてしまうことがあります。
CCIでも、何度も確認するなど、間違いを避けるために必要以上に慎重になる行動が挙げられています。こうした傾向は、人とのやり取りの中で表れることもあります。
④ 小さな失敗を長く引きずり、自分自身を責めてしまう
ミスをしたときに、「今回はうまくいかなかった」と考えるのではなく、「こんなこともできない自分はだめだ」と、自分自身の評価まで下げてしまうことがあります。
CCIは、完璧主義の傾向がある人は、高い基準を満たせなかったときに強く自己批判しやすく、一つの失敗に注目することで、それ以外にできていたことを見落としやすくなる場合があると説明しています。
■苦しくなったときに、日常の中で試せる工夫
完璧主義によって負担が生じているからといって、「完璧にしないようにしよう」と考えても、すぐに考え方を変えるのは難しいものです。
そこで一つの方法となるのが、考えそのものを無理に消そうとするのではなく、普段の行動を少しだけ変えてみることです。
CCIも、完璧主義への対応として、避けていた行動を少しやってみたり、何度も確認していた行動を少し減らしたりして、実際に何が起こるのか確かめる「行動実験」を紹介しています。
また、いきなり大きく変えるのではなく、小さな段階に分けて試すことも勧められています。
■「もう少しやりたい」と思うところで、一度やめてみる
中途半端なところでやめるのが苦手な場合は、いきなり「適当でいい」と考える必要はありません。
たとえば、いつも3回確認している仕事なら、まずは2回にしてみる。掃除なら、いつもすべて終わらせるところを、「今日はここまで」と範囲を一つだけ狭くしてみる。
CCIも、確認をいきなりなくすのではなく、回数を少しずつ減らしていく方法を紹介しています。
実際に少し早くやめてみて、困ったことが起きたのか、それとも思っていたほど問題はなかったのかを確認してみます。
■始められないときは「5分だけ」と決める
「きちんとやらなければ」と思うほど、始めること自体が大きな仕事に感じられることがあります。
そんなときは、終わらせることではなく、「5分だけ取り組む」と決めてみる方法があります。
CCIの先延ばしへの支援でも、まず5分だけ取り組み、その後もう少し続けられそうなら続けるという方法が紹介されています。
5分で終わっても構いません。「全部できるか」ではなく、まず始めることだけを小さくしてみます。
■返信や確認は、いつもより1回だけ減らしてみる
メールやLINEを何度も読み返してしまう場合も、「確認しない」とする必要はありません。
たとえば、いつも3回見直しているなら2回にするなど、まず1回だけ減らしてみます。
CCIでも、繰り返している確認行動を少しずつ減らし、その結果を確かめる方法が使われています。実際にやってみることで、「確認を減らすと本当に大きな問題が起きるのか」を確かめることができます。
■自分を責めていることに気づいたら、もう一言だけ加える
失敗したときに「なんでこんなこともできないんだ」と思ってしまうことがあります。
その考えを無理に打ち消す必要はありません。
ただそのあとに、
「失敗したことと、自分自身の価値は同じではない」
「次にできることは落ち着いてから考えよう」
など、自分に向ける言葉を一つだけ加えてみましょう。
CCIでは、自分を強く批判する傾向に対して、自分のつらさに気づき、自分にも思いやりを向ける「セルフ・コンパッション」の練習を紹介しています。
セルフ・コンパッションに関する研究では、自己批判を減らす効果が報告されています。
※ただし、研究にはばらつきがあるため、今後さらに検証が必要とされています。
大切なのは、「失敗しても平気」と思い込むことではなく、失敗した自分を責めてしまう時の対応方法を一つ持っておくことです。
■参考・出典
・American Psychological Association(APA)「Perfectionism」
APA Dictionary of Psychology
APA Dictionary of Psychology「Perfectionism」
・Camden and Islington NHS Talking Therapies「Perfectionism」
NHS Talking Therapies「Perfectionism」
・Centre for Clinical Interventions(CCI)「Perfectionism in Perspective」
Module 1: What is Perfectionism?
CCI「What is Perfectionism?」
・Centre for Clinical Interventions(CCI)「Perfectionism in Perspective」
Module 5: Reducing my Perfectionist Behaviours
CCI「Perfectionism Self-Help Resources」
・Centre for Clinical Interventions(CCI)「Procrastination Self-Help Resources」
Module 5: Practical Techniques to Stop Procrastination
CCI「Procrastination Self-Help Resources」
・Centre for Clinical Interventions(CCI)「Self-Compassion Self-Help Resources」
CCI「Self-Compassion Self-Help Resources」
・Wakelin, K. E., Perman, G., & Simonds, L. M.(2022)
“Effectiveness of self-compassion-related interventions for reducing self-criticism: A systematic review and meta-analysis”
Clinical Psychology & Psychotherapy
PubMed掲載ページ
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